世界的に異常な暑さとなった今年の8月。シチリア島ではなんと、観測史上世界最高の48.8度を記録しました。もはや人間の暮らせる気温ではないですね。

しかし、そこは数千年に渡り、幾多の困難を乗り越えてきたシチリアの人々。様々な工夫で乗り越えています。

お酒の面で言えば、「マルサラ」という名のワインがその筆頭でしょう。

 

シチリア西部の港町マルサラ(Marsala)が発祥のこのワインは「酒精強化ワイン」と呼ばれる特殊なワインです。

ワインを作る過程でブランデーを加えて、アルコール度数を高めることで、高温や長期輸送に耐えられるワインへと変貌します。

スペインの「シェリー」、ポルトガルの「ポルト」や「マデイラ」も酒精強化ワインですので、ピンとくる方も多いのではないでしょうか。

今年に限らず、常にアフリカからの熱風にさらされる夏のシチリアでは、この劣化に耐えられる「マルサラ」が人々の潤いとなっています。

さて、そのマルサラを造るための原料として有名なのが「グリッロ(Grillo)」というシチリア特有の白ブドウです。「グリッロ」から造られる通常の白ワインもまた、シチリアの暑さを凌ぐのに最高の爽やかワインです。

あの濃厚なマルサラからは想像がつかないほどライトでフルーティー。特に熟したトロピカル・フルーツ(マンゴーなど)のニュアンスも感じさせます。

しかしながら、しっかりとした果実味とコクがあって飲み応え十分。後味にあまり癖がなく、特に魚介類とよく合います。

日本の夏は高温多湿。シチリアの暑さとはまた質が違いますが、「熱中症」を誘う厳しい暑さを乗り切る一杯として「グリッロ」は大きな活力をくれること間違いなしです。