前回のコラムでご紹介した「グリッロ(Grillo)」と双璧をなす、シチリア島土着の白ワイン用ブドウをご紹介します。

すでに日本のスーパーでも見られるようになった「インツォリア(Inzolia)」です。

最近はグリッロよりも、こちらの方がシチリアの白ワインとしてメジャーではないでしょうか。

グリッロによる白ワインの特徴が、ライトでフルーティーな味わいであるのに対し、インツォリアの白は、果実味が豊富でコクがあり、苦味さえ感じるミネラル感が特徴です。

どちらかと言うと、日本人の好みに合うのはインツォリアではないかという気がします。

色は緑がかった黄色で、見た目も爽やか。野菜のグリルや魚介類全般に良く合います。

「コクがある」と表現しましたが、決して重いタイプではなく、シャープな酸味のライトな味わいです。

グリッロ同様、カンカン照りのシチリアの太陽の下でも、クイッと一杯ひっかけたくなる涼しげな飲み口。蒸し暑い日本の夏にもぴったりでしょう。

インツォリアの主要生産地はシチリア島西部のトラパニ周辺。グリッロが多く栽培されるマルサラ辺りよりも少し北に位置します。

実はインツォリアは、以前はブレンド用素材として利用されていた二次的ブドウ。シャルドネやグリッロにブレンドして、主にボディを与える役割でした。

しかし近年、醸造技術が向上し、インツォリア単独でもその長所をうまく引き出せるようになったことで一気に注目が集まりました。比較的新しいワインと言えます。

シチリア島で初めてインツォリアを頂いたときの思い出があります。

パレルモに住む友人が、車でバゲリア(Bagheria)の海沿いのレストランに連れて行ってくれて「魚介のクスクス(Cus cus di pesce)」を食べさせてくれました。その料理に合うワインとして勧めてくれたのがインツォリアでした。ニンニクやセロリなど香の強い様々な野菜とともに煮込んだ魚介類、さらにサフランで風味づけされたクスクスがなんともエキゾチックな味わいで、そこに爽やかながらボディのあるインツォリアが絶妙にマッチし、独特なマリアージュが長旅の疲れが吹き飛ばしてくれたのを覚えています。

日本の食卓で言えば、お刺身やたたきにはグリッロが合い、グリルした魚介類や煮込みにはインツォリアがマッチするのではないかと思います。

思い思いにシチリア・ワインとの組み合わせを楽しんで、厳しい夏を乗り越える定番にしてもらえればと思います。