以前のブログ「T E R R Aおすすめ本」でご紹介した、カラブリア料理のレシピ本『La cucina di Anita』の翻訳者であるイタリア料理研究家の前澤由希子さんにお話を聞きました。カラブリア料理という、日本ではまだ馴染みのない地方料理を紹介するという根気のいる仕事をやり終えて、その思いを語ってくださいました

本書を訳すきっかけとなったのは?

「以前からアニータさんとは料理を通じての交流がありました。私が向こうへ行って教えて頂いたり、ツアーで生徒さんをお連れするなど、接点があったんですね。それがコロナ禍で行き来ができなくなり、メールでのやり取りが中心になった頃、元々本を出したいと思っていたアニータさんが本腰を入れてレシピをまとめるということになったんです。ちょうどオンラインでの料理教室を開始していて、時々現地とZoomで繋いで出て頂いたりしたのですが、そのたびにイタリア語でのレシピが送られてきて、私がそれを訳すというようなことからスタートしました」

 

本書はイタリア語、英語、日本語の3ヶ国語で読めるようになっていますね。

「カラブリアの料理が世界的に広まってくれればと思います。あとがきにも書かれていますが、英訳者も私も、イタリア各地の料理に深い知識と関心を持っていること、そして熱意を持って翻訳に取り組んだことを高く評価してくれています。カラブリアにも日本人はたくさんいて、仲の良い人もいると思うのですが、私に翻訳を任せてくれたのは、これまでのお互いの活動通じて、私の仕事ぶりを信頼してくれていたのかなと、嬉しく思ってます」

 

カラブリア料理の特徴は? 他のイタリア料理と比べてどうですか?

「赤い!という印象(笑)。唐辛子をたくさん使うイメージですね。ペーストタイプのソーセージ”ンドゥイヤ”を代表に、保存の効くものをうまく使うのが特徴だと思います。元々、カラブリア州はそんなに食材が豊富な地域ではありません。主要な作物と言えば野菜だけと言っていいくらい。そうした制限の中で、夏に収穫できた素材から保存食を作り、冬の間もしっかりと持たせ、美味しい食卓を守っていく主婦たちの知恵がレシピに表れていると思います。本書には「保存食レシピ」のコーナーがありますが、カラブリアならではの工夫が詰まった貴重な情報だと思います」

 

最後に、アニータさんのレシピと本書の見どころを教えてください。

「本書は料理に関するデータというだけではなく、アニータさんの家庭での思い出、ヒストリー的なものが散りばめられたアルバムのようでもあります。言わば、昔ながらの、日本で言えば昭和の食卓のような、一家団欒があるからこその一品一品ではないでしょうか。レシピの行間から、そのような古き良き時代を想像してもらえると嬉しく思います」

 

本書は発行部数も少なく、すでに売り切れ状態が続いているようですので、今後購入したい方はしばらくお待ちいただくことになりそうです。前澤さんは今後もオンラインによる料理教室を継続し、状況が良くなればアニータさんとのレッスンもあるかもしれません。本を待っている間、ぜひ前澤さんの料理教室「Ciao Bambina」に参加して、様々なイベントに触れてみるのもおすすめです。ご興味ある方は、こちらをクリックして下さい。