『ワイン知らず、マンガ知らず』の帯を書いて頂き、

去年10月のエティエンヌ・ダヴォドー氏来日の際には、

対談もして頂いた島村菜津さんの新刊が発売されました。

タイトルは『シチリアの奇跡』。

ご購入はこちらから。

シチリアといえば、すぐにマフィアが思い浮かぶかもしれませんが、

まさに島村さんご自身がそのマフィアの土地に潜入取材!

といっても、そこは「スローフード」でお馴染みの島村さん、

本書の副題に「マフィアからエシカルへ」とあるように、

かつてはマフィアの温床となっていた土地が、

今や健全な農業と、エコな食材の生産地として生まれ変わろうとしている…

そんな軌跡を追ったレポートなのです。

 

私が興味深かったのは「押収地」という存在で、

マフィアから国が押収した土地のことを言っています。

ご存じの通り、マフィアと、国をはじめとする行政や裁判所との対立は、

大変に長く、陰惨な歴史がありますが、地道な捜査や裁判によって、

少しずつシチリアは非合法な組織から解放されているのです。

それにより増えてきた押収地を、今度は有機栽培の農地に作り替え、

生協などと連携したエコ食材の販売に繋げようという試みが、

近年、しっかりと実を結んできたのだと言うのです。

 

「マフィアがその土地を、暴力を行使し、力を誇示する場にしていたのなら、私たちは地元の人たちを豊かにする場に変える。具体的には新しい仕事の場にしていく。そのために何より大切なのは、土地のイメージを変えていく作業なのです」(本書P168ページより引用)

 

本書に登場する協同組合「リーベラ・テッラ」のひとりの職員の、このような言葉は重く、

しかしながら力強い未来への意志を感じさせ、心を明るくしてくれます。

最近は、日本のスーパーの棚にも、シチリア産のオーガニックワインをよく見かけるようになりました。

こうしたワインを買うことは、シチリアの健全な人々に繋がることを、本書は示してくれます。

そのような意志による購入を「エシカル消費」と言います。

バタフライ・エフェクトとは、南米の一匹の蝶の羽ばたきが、テキサスの暴風の原因になると言う仮説ですが、

日本での1本のワインの購入が、シチリアの大きな解放と安全を手助けするのではないか、、、

そんな可能性を信じさせてくれるのが本書です。

21世紀の農業、そして未来の食の安全を真剣に考える方へ、おすすめの一冊です。

本書のご購入に便利です。