暦はもう11月、秋も深まってまいりましたね。ワインは新酒の季節です。イタリアではノヴェッロ、フランスではボジョレー・ヌーヴォー、ドイツではデア・ノイエが解禁されます。2021年ビンテージを占う上でも、楽しみな時期です。新酒の情報は、また次回に詳しくお伝えしたいと思います。
さて、前回に続き、オレンジ・ワインのお話をいたします。
前述のように、オレンジ・ワインはジョージア(グルジア)が発祥と言われます。それよりもジョージアは、ワインそのものの発祥地として注目が集まっています。その真偽を巡ってはまだ諸説あるものの、実際に8000年前のワイン造りが確認されており、最古のうちの一つであることは間違えありません。
そんな歴史あるジョージアのカヘチ地方に伝わるのがオレンジ・ワインの製法です。この地方の造り方の特色は「クヴェヴリ」と呼ばれる卵型の土製の壺(いわゆる「アンフォラ」)。その中に、葡萄の皮、種、茎をそのままモスト(葡萄果汁)と一緒に漬け込んで発酵させるのです。
さらに、このクヴェヴリを地中に貯蔵して、ワインを熟成させます。土に埋めることで、温度が安定し、長期間の熟成が可能になるというわけです。こうして白ワインでありながら、赤ワインのようにタンニン豊かなワインが出来上がります。ちなみにこの地方では、「オレンジ」ではなく「アンバー・ワイン」(琥珀のワイン)と呼ばれます。
このジョージアのワインを西ヨーロッパ諸国へ持ち込み、各国へ広がるきっかけとなったのがイタリアのワイン生産者たちです。ジョージアは旧ソ連の構成国で、情報が表にでないような地域でしたが、1991年に独立したことで、こうしたワインの情報も届くようになったのです。特にオレンジ・ワインに関しては、1990年代初頭にそのワイン造りを視察に出向いたヨスコ・グラヴナー(イタリア語読み: グラヴネル)を始め、スタンコ・ラディコンといったフリウリ=ヴェネツィア=ジューリア州の生産者が深く関わっています。
当初、彼らの目的は、フリウリ地方の原産葡萄リボッラ・ジャッラを強化することでした。この葡萄は非常に皮が厚く、それがマセレーション(浸漬)に特に適していました。その葡萄とジョージアの製法が見事に合体し、本場ジョージアをしのぐほどのワインを生み出したといわれます。それが、アンバー・ワインと区別するために「オレンジ・ワイン」と名付けられ、今、私たちも気軽に手に取れるように広まったというわけです。
このようなことから、イタリアには優れたオレンジ・ワインが増えています。また、フランス、スペイン、オーストリアなど各国に、質の高いオレンジ・ワインの生産者が存在します。オレンジ・ワインには、まだ厳密な法規制がないため、生産者の個性やそのテロワールが存分に反映されやすく、ポテンシャルの高さに期待が集まっています。
(多彩なオレンジ・ワインの一部を写真でご紹介)
そんなオレンジ・ワインの可能性に、私も興味津々です。今後もいろんな国の、様々なタイプのものにチャレンジしたいと思っています。そしてまた、どんな食事と相性が良いのか。そんな興味もつきません。ちまたでは、タイ料理やベトナム料理など、アジア系料理に抜群にマッチするとも聞きます。このように遊び心もくすぐるオレンジ・ワインを、皆様にもおすすめします!